Written :
January 9, 2025
Updated :
January 9, 2025

Vol.21 🛡️防御は最大の攻撃|DeFiで絶対に抑えるべき3つの防衛策

(本ページはプロモーションを含んでいます)

このブログは以下のような方に読んでいただきたいです。

1)DeFiに必要な防御力である「フィッシング対策」とは?

2)メタマスクを使って防御力を高めるには?

3)ハードウェアウォレットを使って防御力を高めるには?

あなたの大切な暗号資産が一瞬で消えてしまう - そんな悪夢のような出来事が、実際に世界中で日々発生しています。2023年だけでも、DeFi関連の被害総額は10億ドルを超えると報告されています。しかし、適切な知識と対策があれば、その大半は防ぐことができるのです。

【結論】DeFiのセキュリティ対策の要は、「フィッシング対策」、「取引の確認プロセスの徹底」、そして「ハードウェアウォレットの活用」です。この3つを確実に実施することで、資産を安全に保護することができます。

1)フィッシング対策

DeFiを利用する際のセキュリティ対策は、単なる技術的な問題ではありません。それは私たちのデジタル資産を守るための総合的な防御戦略です。近年、DeFiプロトコルを狙った攻撃は、より巧妙化し、従来の金融セキュリティでは対応できない新しい脅威が次々と現れています。特に重要なのは、ユーザー自身が適切な判断と行動を取れるようになることです。セキュリティ対策は、技術的な対策だけでなく、ユーザーの意識と行動の両方に関わる包括的なアプローチが必要です。

①フィッシングの基本理解

フィッシング攻撃は、DeFi分野で最も一般的な攻撃手法の一つとなっています。攻撃者は、正規のウェブサイトやサービスになりすまして、ユーザーの個人情報や秘密鍵を盗もうとします。特にDeFiの世界では、取引の即時性と不可逆性という特徴があるため、一度被害に遭うと取り返しがつかない状況になりやすいのです。

a) URLの偽装手口の種類

URLの偽装には、実に巧妙な手法が使われます。最も一般的なのは、正規のドメイン名に似せた文字列を使用する方法です。例えば、アルファベットの「O」と数字の「0」を置き換えたり、文字間にハイフンを挿入したりします。また、HTTPSの証明書を取得して、ブラウザにセキュリティマークを表示させる手法も増えています。

さらに高度な手法として、Unicodeを使用した文字の置き換えや、正規のドメインに似せたサブドメインの使用なども登場しています。これらの攻撃から身を守るためには、URLの慎重な確認に加えて、複数の信頼できる情報源を活用することが重要です。具体的には、プロジェクトの公式Twitter(X)からの発信を確認したり、CoinGeckoなどの大手プラットフォームに掲載されている公式リンクを利用したりすることで、より安全なアクセスが可能になります。

b) DNSハックの仕組み

残念ですが、正しいURLを確認し、それをブックマークして毎回使うだけではリスクが残ります。

「DNSハック」とよばれるフィッシング手法を使用された場合、正規のURLからでもフィッシングの詐欺に遭う可能性があります。DNSとは、Domain Name Systemの略で、インターネットの住所録のような役割を果たすシステムです。私たちが普段使用する「www.example.com」といったドメイン名を、コンピュータが理解できる「192.0.2.1」などのIPアドレス(=Webサイトの住所)に変換する仕組みです。DNSサーバーは、このドメイン名とIPアドレスの対応表を保持し、ブラウザからの問い合わせに応じて適切なIPアドレスを返す役割を担っています。

DNSハックとは、このDNSの仕組みの脆弱性を突いた攻撃手法です。攻撃者は、DNSサーバーの設定を改ざんしたり、通信経路上でDNSの応答を偽装したりすることで、ユーザーを偽装されたウェブサイトへ誘導します。これは、まるで道路標識を書き換えて、目的地とは異なる場所へ誘導するようなものです。

下の図で、説明すると真ん中の「DNSサーバー」が悪意を持ったハッカーに操作されて、「ユーザー」が⑥2の段階で詐欺サイトに誘導されてしまうのです。

Source: https://eset-info.canon-its.jp/malware_info/special/detail/230316.html?utm_source=perplexity

DNSハックを使われると、公式サイトであっても、完璧な安全性を保証することは困難す。ウェブサイトは常に進化する攻撃に対して脆弱性を持っています。

また、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク=Webサイトの内容を柔軟に変えていくソフトウェア)が攻撃されることで、正規サイトを通じてマルウェアが配布されるケースも増加しています。このような脆弱性に対処するためには、複数の防御層を設けることが重要です。

②DNSハックの実例

DeFiプロトコルを狙ったDNSハック事例は、その手法の巧妙さと被害の大きさから、重要な学びを提供しています。これらの事例を詳しく見ることで、私たちは将来の攻撃に対する備えを強化することができます。特に、攻撃手法の進化と、それに対する防御策の重要性を理解することができます。

a) Ether Deltaの事例(2017年12月)

Ether Deltaの事例は、分散型取引所に対する初期の大規模なDNSハック事例として知られています。2017年12月、攻撃者はEther DeltaのDNSサーバーを乗っ取り、偽のウェブサイトにユーザーを誘導しました。このとき、攻撃者は正規のドメインを乗っ取ることに成功し、ユーザーがアクセスしても通常のURLが表示されていたため、多くのユーザーが気付くことができませんでした。

攻撃により、多くのユーザーが秘密鍵を盗まれ、約220万ドル相当の暗号資産が失われました。この事例の特徴は、攻撃者が正規のサイトの完全なコピーを作成し、ユーザーが入力した秘密鍵情報を収集していたことです。また、この攻撃は約6時間続き、その間に多くのユーザーが被害に遭いました。この事例は、DNSセキュリティの重要性と、定期的なセキュリティ監査の必要性を浮き彫りにしました。

b) Nexus Mutualの事例(2020年12月)

Nexus Mutualは、スマートコントラクト保険を提供する主要なDeFiプロトコルです。2020年12月14日、攻撃者はドメイン登録情報を改ざんし、偽のウェブサイトを作成しました。この攻撃の特筆すべき点は、攻撃者が正規のSSL証明書を取得していたことです。これにより、ブラウザは安全な接続を示す緑色の鍵マークを表示し、ユーザーの警戒心を低下させることに成功しました。

攻撃者は、Nexus MutualのCEOのアカウントを乗っ取ることにも成功し、約35万ドル相当のNXM(Nexus Mutualのトークン)を盗み出しました。この事例は、SSL証明書だけでは安全性を保証できないこと、また経営陣を狙った標的型攻撃の危険性を示しました。さらに、ドメイン登録情報の管理の重要性も明らかになりました。

c) Convex Financeの事例(2022年6月)

Convex Financeへの攻撃は、2022年6月に発生した、より高度な手法を用いたDNSハックの例です。攻撃者は、複数のCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)を経由して正規サイトのコンテンツを改ざんすることに成功しました。この攻撃の特徴は、ウェブサイトの見た目が完全に正規のものと同じであり、一般的なセキュリティチェックでは検出が困難だったことです。

攻撃者は、スマートコントラクトの呼び出し先を巧妙に攻撃者のものに置き換え、ユーザーが承認した取引が攻撃者のコントラクトに向けられるように細工しました。この事例では、実際の被害額は比較的少額に抑えられましたが、CDNを経由した攻撃の危険性と、スマートコントラクトの呼び出し先を慎重に確認することの重要性が明らかになりました。

③対応策(概略)

DeFiのセキュリティ対策は、技術的な対策と人的な対策の両方が重要です。以下では、主要な対応策について詳しく説明します。継続的な注意と適切な習慣づけにより、多くのリスクを軽減することができます。

a) 信頼のできるDeFiプロトコルと取引し、不要なものはRevokeする

DeFiプロトコルの選択は、セキュリティにおいて非常に重要な要素です。これで全てを解決できるわけではありませんが、信頼性を確認すべきサイトの数を少なくすることで、効率の良いDeFiライフを送ることができるでしょう。信頼できるプロトコルの特徴としては、以下のようなものがあります:

  • 長期間にわたって運用実績がある
  • 大規模なTVL(Total Value Locked)を維持している
  • 活発なコミュニティを持っている

また、使用しなくなったプロトコルへの承認は、必ずRevoke(キャンセル)することが推奨されます。これは、不要な承認を放置することで、攻撃の対象となるリスクを減らすためです。Revokeの方法は、メタマスク上の Revoke機能や、Revoke.cashなどのツールを使用することで簡単に行えます。定期的に(例えば月1回)承認状況を確認し、不要なものを取り消す習慣をつけることが重要です。

b) ウォレットとブロックチェーンエクスプローラーでトランザクションを確認する

トランザクションの署名データの確認は、セキュリティ対策の基本中の基本です。これを実行することでDNSハックを回避することができます。各トランザクションが実行する具体的な操作を、実行前に必ず確認することが重要です。特に、スマートコントラクトとの対話では、承認している操作の範囲と影響を理解することが重要です。

具体的な確認のポイントとしては、まずウォレット上で表示されるコントラクトアドレスを確認します。例えばUniswap v3であればコントラクトアドレスはプール関わらず“0xE592427A0AEce92De3Edee1F18E0157C05861564” になります。このようにコントラクトアドレスが一定の場合は、これと照合しましょう。また、公開されていない場合はEtherscanなどのブロックチェーンエクスプローラーでコントラクトアドレスを照合し、ブロックチェーンエクスプローラーがコントラクトに付けているタグ、最近の取引の数量(あまりに少なければ何かがおかしい)、コントラクトの作成者などを確認します。

この確認作業には時間がかかりますが、この一手間が資産を守る最後の砦となります。「急いでいるから」「少額だから」という理由で省略してしまうと、取り返しのつかない被害につながる可能性があります。

c) ハードウォレット(Trezor T)を活用する

ハードウェアウォレットの使用も効果的なセキュリティ対策の一つです。物理的なボタン操作による承認が必要なため、マルウェアによる不正な取引を防ぐことができます。また、秘密鍵がオフラインで保管されるため、オンラインの攻撃からも保護されます。

私が使っているTrezor Tの特徴は、取引内容を物理的な画面で確認できることです。この画面は改ざんが不可能なため、マルウェアに感染したPCを使用している場合でも、正確な取引内容を確認することができます。また、パスフレーズ機能を使用することで、追加のセキュリティレイヤーを設けることも可能です。

2)メタマスクでの具体的な対策

メタマスクは最も広く使用されているWeb3ウォレットの一つですが、適切な使用方法を知らないと重大なリスクにさらされる可能性があります。以下では、メタマスクを安全に使用するための具体的な方法を解説します。セキュリティを確保するためには、システマチックなアプローチと日々の注意深い運用が必要です。

①取引を限定する

DeFiの世界では、新しいプロトコルが次々と登場しますが、すべてのプロトコルが同じように信頼できるわけではありません。安全性を確保するためには、取引するdAppsを慎重に選択し、限定することが重要です。特に、高利回りをうたう新規プロトコルには細心の注意を払う必要があります。

a) 取引するdAppsを限定する

利用するdAppsは、十分な実績とTVLがあり、セキュリティ監査を受けているものに限定することが推奨されます。新しいプロトコルは高いAPYを提供することがありますが、それに比例してリスクも高くなりますし、危険なdAppsである可能性があります。特に、ロックアップ期間のある取引や、複雑な仕組みを持つプロトコルについては、より慎重な判断が必要です。コミュニティからのレビュー、TVLの推移と安定性、開発チームの透明性と実績、そしてコミュニティの活発さと問題への対応速度なども重要な判断材料となります。

b) 金額を限定する

一つの取引に対する承認額は、メタマスクのToken Approval機能を使って適切に制限することが重要です。(言い換えればメタマスクとフィッシングサイトを繋いだとしても、このApprovalを出さなければ、メタマスクから暗号資産が盗まれることはないのです。)多くのDeFiプロトコルでは、デフォルトで無限大(Unlimited)の承認を求めてきますが、これは必要以上のリスクを負うことになります。代わりに、その取引で必要な金額のみを承認することで、リスクを大幅に軽減することができます。

さらに、新規プロトコルを試す際は、まず少額で承認と取引を行い、問題がないことを確認してから徐々に金額を増やしていくアプローチを取ります。また、たとえ実績のあるプロトコルであっても、一度の承認額を必要最小限に抑えることで、万が一の場合のリスクを制限することができます。

②個別取引でトランザクションの署名データを確認する

各取引において、署名データの確認は最も重要なセキュリティ対策の一つです。この作業は面倒に感じるかもしれませんが、資産を守るための必須のプロセスです。特に大きな取引や、新しいプロトコルとの取引では、より慎重な確認が必要です。

a) 署名データの確認方法

署名データには、取引の内容、送金先アドレス、取引金額などの重要な情報が含まれています。メタマスクでは、これらの情報が確認画面に表示されます。特に注意すべきは、スマートコントラクトとの対話で要求される承認の範囲です。無制限の承認を求められた場合は、特に慎重な判断が必要です。確認の際は、取引の種類が送金なのか、承認なのか、あるいはスマートコントラクトの実行なのかをしっかりと確認します。また、送金先アドレスの正確性、取引金額、ガス代の適正範囲、そしてスマートコントラクトの承認範囲についても慎重に確認する必要があります。具体的な確認方は以下の通りです。

b) 公式サイトやブロックチェーンエクスプローラーでコントラクトアドレスを照合する

トランザクションを実行する前の重要な安全対策として、DeFiプロトコルのコントラクトアドレスの確認があります。確認方法は、プロトコルのタイプによって二通りに分かれます。公式サイトを持つ確立されたプロトコルの場合は、まず公式サイトに記載されているコントラクトアドレスと照合します。公式のドキュメントやGitHubリポジトリにも正規のコントラクトアドレスが記載されていることが多いため、複数の情報源で確認することでより安全性を高めることができます。具体的にUniswap v3 であれば、下記のように同じコントラクトアドレスが使用されます。

0xE592427A0AEce92De3Edee1F18E0157C05861564

またCurveのようにプールごとでコントラクトアドレスが異なるものもあるようです。

一方で公式サイトを持たないプロトコルや、新興のプロトコルの場合は、Etherscanなどのブロックチェーンエクスプローラーで詳細な確認を行います。Etherscanでは、具体的に以下の項目を確認します。まず「Contract」タブで、そのコントラクトが「Verified」(検証済み)であることを確認します。また「Transactions」タブでは取引履歴を確認し、正常な取引が継続的に行われているか、不審な動きはないかを確認します。「Analytics」タブでは、トークンの移動パターンや保有者の分布を確認し、特定のアドレスに資金が集中していないかなども重要な確認ポイントとなります。

さらに、両方のケースにおいて、Etherscanの「Comments」セクションでユーザーからの報告や警告がないかを確認し、「Contract Security Audit」の項目で信頼できる監査機関による監査結果が公開されているかも確認します。

これまで記載してきたことを簡単に実行してみましょう。私はBase上でCurveを使いcrvUSDからUSDCにSwapしてみました。

1:まずCurveでSwapをする際にCurve側で「お金を使います」というApprovalが要求されます。

2:するとメタマスクの画面が立ち上がり、メタマスク上で承認を求められます。ここで記載されているSpenderはcurve.fiになるのですが、これが本当のcurve.fiであるかをコントラクトアドレスを使って確認するためにクリックします。(今回のケースはすでにMetaMaskがcurve.fiであることを記載していますが、念のためコントラクトアドレスまで確認します。)

3: ここからコントラクトアドレスをコピーして

4:BaseScanに貼り付けて、Contractのタブから、スマートコントラクトのヘッダーを確認します。

5:最後にここからSpending Cap(上限金額)を設定します。

c) コントラクトリストを作る

取引の成功を重ねるにつれて、信頼できるコントラクトアドレスが蓄積されていきます。このコントラクトリストを作成し、維持することは、セキュリティを高める効果的な方法です。このリストは、正規のコントラクトアドレスを素早く確認するために役立ちます。個人が副業でDeFiを続けるにあたっては、コントラクトリストが膨大になると管理が大変なので、取引先は限定しておくことが現実的だと考えます。

③定期的に見直す(Revokeする)

DeFiプロトコルを利用する際、私たちはスマートコントラクトに対してトークンの使用権限(Spending Cap)に承認(Approval)を与えています。このApprovalは、一度与えると取り消すまで有効であり続けます。つまり、一回きりの取引のために与えた承認でも、その権限は永続的に残り続けるのです。特に注意が必要なのは、多くのプロトコルがデフォルトで無制限(Unlimited)の承認を要求することです。これは、プロトコルに対してあなたの保有する該当トークンを無制限に使用できる権限を与えることを意味します。このような状態を放置することは、セキュリティ上大きなリスクとなります。

Revokeとは、このようなSpending Capに対する承認(Approval)を取り消す操作のことです。プロトコルに与えた権限を取り消すことで、承認済みのスマートコントラクトが勝手にあなたの資産にアクセスすることを防ぐことができます。これは特に、使用頻度の低いプロトコルや、今後使用する予定のないプロトコルに対して重要な対策となります。また、プロトコルがハッキングされた場合、攻撃者は承認された権限を利用して資産を抜き取ることができます。過去には、承認を取り消していなかったために被害に遭うケースも報告されています。このため、不要な承認は速やかに取り消すことが推奨されます。

なお、一つ注意が必要な点として、MetaMaskのSpending CapのApprovalとPermissionとは別物です。こちらのPermissionはdAppsとMetaMaskの接続を管理するツールであり、Spending CapがRevokeされる訳ではありません。詳細はMetaMaskの公式サイトもご参考までに。ちなみにメタマスクとフィッシングサイトを接続するだけで、暗号資産は盗まれることはありません。

以下に代表的なRevokeの方法を記載します。

a) メタマスクでRevokeする

メタマスクでの承認取り消しは、設定画面から直接行うことができます。定期的に承認済みのコントラクトを確認し、不要なものは積極的に取り消すことが推奨されます。特に、一度しか使用しないプロトコルや、今後使用する予定のないプロトコルの承認は、速やかに取り消すべきです。承認の取り消しは、セキュリティを高める重要な作業であり、定期的なメンテナンスの一環として位置づけることが重要です。

現時点でのUIでは、以下のようにアクセスします。

b) Revoke.cashでRevokeする

Revoke.cashは、より使いやすいインターフェースで承認状況を管理できるツールです。このツールを使用することで、複数のネットワークやトークンの承認状況を一括で確認し、必要に応じて取り消すことができます。また、無制限承認を行っているコントラクトを簡単に特定することができ、定期的なセキュリティチェックに役立ちます。ウォレットアドレスを接続し、承認済みのコントラクト一覧を確認することで、承認額や承認日時を確認し、不要な承認を効率的に取り消すことができます。

Revokeの際には、ガス代が必要となることに注意が必要です。そのため、ガス代が高騰している時期は、複数の承認を一括で取り消すことで、効率的に管理することが賢明です。また、重要なプロトコルの承認を誤って取り消さないよう、慎重に操作を行うことも重要です。

c) 定期的なメンテナンスの習慣化

承認の管理は、定期的なメンテナンスとして習慣化することが重要です。月に一度程度のセキュリティチェックとして、すべての承認済みコントラクトをリストアップし、各コントラクトの使用状況を確認します。そして、不要な承認を取り消し、必要に応じて承認額を調整し、新しい承認の必要性を検討するという一連の作業を行います。このような定期的なメンテナンスにより、不要な承認によるリスクを最小限に抑えることができます。

結論として、メタマスクでのセキュリティ対策は、単発の対応ではなく、継続的な取り組みとして考える必要があります。日々進化するDeFiの世界では、新しい脅威が次々と現れるため、常に最新の情報をキャッチアップし、必要に応じて対策を更新していく姿勢が重要です。また、面倒だからという理由でセキュリティ対策を怠ることは避けるべきです。たとえ小額の取引であっても、基本的なセキュリティ手順は必ず守る習慣を身につけることが、長期的な資産保護につながります。

3)Trezor Tでの対策

ハードウェアウォレットは、暗号資産を安全に管理するための最も効果的なツールの一つです。特にTrezor Tは、優れた機能とユーザビリティを備えています。

①Trezor Tの特徴

Trezor Tは、高度なセキュリティ機能と使いやすさを両立したハードウェアウォレットです。その特徴を理解することで、より安全な資産管理が可能になります。

a) コントラクトアドレスを確認しやすい

Trezor Tの大きな特徴は、取引内容やコントラクトアドレスを物理的な画面で確認できることです。カラー液晶の大きな画面により、アドレス全体を一度に表示することができ、スクロールすることなく全体を確認できます。特にイーサリアムのスマートコントラクトとの対話では、承認内容や取引内容を詳細に確認することができます。また、マルウェアに感染したPCを使用している場合でも、Trezor T自体の画面は改ざんができないため、正確な情報を確認することができます。これにより、フィッシング詐欺や悪意のある取引を効果的に防ぐことが可能となります。

b) 物理的なセキュリティが高い

Trezor Tは、物理的な攻撃に対する高度な耐性を備えています。デバイス内の秘密鍵は特殊な暗号化チップで保護されており、物理的な解析や改ざんを試みても、内部の情報を抽出することは極めて困難です。また、使用していない時は完全にオフラインにすることができ、インターネットを介した攻撃から完全に隔離された状態で秘密鍵を保管できます。さらに、デバイスへの物理的なアクセスがあった場合でも、PINコードによる保護があり、一定回数の誤入力でデバイスがロックされる仕組みも備えています。

c) 取り扱いが簡単

Trezor Tは、その高度なセキュリティ機能にもかかわらず、極めて使いやすい設計となっています。使用時はUSB-Cケーブルで接続するだけで自動的に認識され、不要な時は簡単に取り外すことができます。専用のデスクトップアプリケーションであるTrezor Suiteは直感的なインターフェースを備えており、初心者でも容易に操作することができます。また、メタマスクとの連携も簡単で、普段使いのウォレットとしての利便性も確保されています。ファームウェアのアップデートも自動的に通知され、数クリックで完了できる仕組みとなっています。

②Trezor Tの使い方

Trezor Tを安全に使用するためには、適切な初期設定と使用方法の理解が重要です。以下では、その具体的な手順を説明します。

a) 購入は公式から

Trezor Tの購入は、必ず公式ウェブサイトから行うことが重要です。これは、偽造品や改ざんされた製品によるリスクを避けるためです。市場には多くの偽造品が出回っており、これらは正規品と見分けがつかないほど精巧に作られていることがあります。また、一見信頼できそうな大手ECサイトでも、第三者による出品には注意が必要です。

購入後は、パッケージの封印が破られていないことを必ず確認します。Trezor Tのパッケージには、複数のセキュリティ要素が組み込まれています。まず、外箱のホログラムステッカーが正しく貼られているか確認します。このステッカーは特殊な光の反射パターンを持っており、偽造が極めて困難です。次に、パッケージのシールが破損していないことを確認します。目視での確認に加えて、公式サイトで提供されているパッケージ認証ツールを使用することで、より確実な真贋確認が可能です。万が一、不自然な痕跡を発見した場合は、使用を開始せずに直ちに公式サポートに連絡することが推奨されます。

b) インストール

Trezor Tのインストールと初期設定は、デバイスのセキュリティを確保する上で最も重要なプロセスです。まず、公式サイトからTrezor Suiteをダウンロードし、インストールします。このとき、ダウンロードURLが正しいことを必ず確認してください。HTTPSの証明書が正しく表示されていることも重要なチェックポイントです。

初期設定では、まずデバイスのファームウェアが最新であることを確認し、必要に応じてアップデートを行います。ファームウェアのアップデートは、新しいセキュリティ機能の追加や既知の脆弱性の修正を含むため、必ず実施する必要があります。この際、画面の指示に従って慎重にセットアップを進めることが重要です。

特に重要なのは、リカバリーフレーズの生成と保管です。このフレーズは、デバイスが故障や紛失した場合の唯一のバックアップとなります。フレーズは必ず物理的な形(紙やステンレスプレート)で保管し、決して電子データとして保存しないことが重要です。また、フレーズを生成する際は、周囲に人がいないことを確認し、カメラやマイクなどの記録デバイスがない環境で行うことが推奨されます。保管場所は、火災や水害にも耐えられる金庫や、銀行の貸金庫など、物理的に安全な場所を選びましょう。

c) 具体的な使い方、セキュリティ機能

Trezor Tは、日常的な使用においても高度なセキュリティ機能を提供します。取引を行う際は、必ずデバイスの物理的な画面で取引内容を確認し、デバイス上のボタンで承認する必要があります。この物理的な確認プロセスは、マルウェアやフィッシング攻撃からの保護において極めて重要です。

特に注目すべき機能は、パスフレーズ機能です。これは通常の24語のリカバリーフレーズに加えて、追加のパスワードを設定することで、新しいウォレットを作成する機能です。このパスフレーズは、第2のシードフレーズとして機能し、デバイスが盗まれた場合でも資産を保護することができます。例えば、少額の資金を通常のウォレットに、大口の資産をパスフレーズ保護されたウォレットに保管するといった使い分けが可能です。

また、定期的なファームウェアのアップデートとセキュリティ設定の見直しも重要な保守作業となります。Trezor Suiteは自動的にファームウェアの更新を通知してくれますが、更新の内容を理解した上で実施することが重要です。

d) メタマスクとの連携の方法

メタマスクとTrezor Tの連携は、セキュリティと利便性を両立させる重要な設定です。連携は以下の手順で行います:

  1. まずメタマスクの設定画面を開き、「ハードウェアウォレットを接続」オプションを選択します。
  2. 表示されるハードウェアウォレットの一覧からTrezorを選びます。
  3. Trezor Tをコンピュータに接続すると、デバイス上でPINの入力を求められます。
  4. PIN認証後、利用可能なアカウントの一覧が表示されるので、インポートしたいアカウントを選択します。
  5. 必要に応じて、複数のアカウントをインポートすることも可能です。

ユーザインターフェースは頻繁に変更されますので、ご自身で連携させる際には、公式ウェブサイトを中心に最新の情報をネットでリサーチすることが実用的です。

一方で、考え方として重要なことは「Trezor Tはメタマスクと連携することが可能であり、これを通じてハードウェアウォレットとしてのセキュリティーを維持しながらレイヤー2を含めた様々なネットワークと接続が可能になり、相乗効果がある」ということを理解することです。

連携後は、メタマスクから取引を開始できますが、重要な点として、承認時には必ずTrezor T本体での確認と承認が必要となります。この二段階の承認プロセスにより、マルウェアなどによる不正な取引を防ぐことができます。また、デバイスの画面で表示される取引内容と、メタマスク上の表示が一致することを必ず確認してください。

連携後も定期的にセキュリティ設定を見直し、不要なアカウントの連携を解除するなど、適切な管理を心がけることが重要です。

また、Trazor Tはイーサリアムのメインネットしか直接は取り扱いできませんが、メタマスク経由で連結すれば、アビトラムやベースなどレイヤー2のネットワークとも接続可能になります。Trezor TとDeFiを繋げるためにはP以下のPermissionからメタマスクを操作すると良いでしょう。

③Trezor Tとメタマスクとの比較

a) Trezor Tの長所

Trezor Tの最大の長所は、完全なオフラインセキュリティを提供できることにあります。秘密鍵がデバイス内で生成され、決して外部に出ることがないため、オンラインの脅威から完全に保護されます。また、取引の承認時には物理的な画面で内容を確認し、物理ボタンでの承認が必要となるため、マルウェアによる不正な取引を防ぐことができます。さらに、高度な暗号化技術により、デバイス自体が物理的に攻撃された場合でも、内部の情報を保護することができます。パスフレーズ機能を使用することで、追加の保護層を設定することも可能で、デバイスが盗まれた場合でも資産を守ることができます。

b) メタマスクの長所

メタマスクの最大の利点は、その利便性と柔軟性にあります。ブラウザ拡張機能として動作するため、インストールが簡単で、どのデバイスからでも即座にアクセスが可能です。DeFiプロトコルとの連携がスムーズで、オンラインのウォレットであることから新しいプロジェクトへの対応も迅速です。また、トークンの追加や、カスタムネットワークの設定も簡単に行えるため、新興のブロックチェーンプロジェクトにも柔軟に対応できます。ガス代の調整機能や、トランザクションの優先度設定なども直感的に操作可能です。さらに、複数のアカウントを簡単に切り替えられる機能や、トークンの承認管理機能など、日常的な取引に便利な機能が豊富に実装されています。

c) どんな時にどちらを使うことが良いのか?

使い分けの基準は、取引の頻度と金額によって決めることが推奨されます。大口の資産や長期保有する資産は、Trezor Tで管理することが望ましいです。一方で小額で、頻繁なDeFiプロトコルの頻繁なやり取りが必要な場合は、メタマスクの使用が効率的です。ただし、メタマスクで管理する資産は、リスクを許容できる範囲に抑えることが重要です。

両者を連携させて使用することで双方の利点を活かした運用も可能となります。これにより、セキュリティと利便性のバランスの取れた資産管理を実現できます。

【まとめ】

DeFiのセキュリティ対策は一見複雑に思えますが、本質的に重要なのは3つのポイントです。

第一に、フィッシングとDNSハックへの対応です。正しいURLだけでは安全とは限りません。取引の際は必ずメタマスクの画面でコントラクトアドレスを確認し、ブロックチェーンエクスプローラーで照合することが重要です。この習慣だけで、多くの詐欺から身を守ることができます。

第二に、取引額の制限です。メタマスクのToken Approval機能を使って、必要な額だけを承認するようにしましょう。さらに、定期的に不要な承認をRevokeすることで、リスクを最小限に抑えることができます。これは面倒に感じるかもしれませんが、資産を守るための重要な投資だと考えてください。

第三に、ハードウェアウォレットの活用です。Trezor Tなどのハードウェアウォレットを使用することで、大切な資産を安全に保管できます。デイリーの取引はメタマスク、大口資産の保管はハードウェアウォレットという使い分けを実践することで、利便性とセキュリティのバランスの取れたDeFiライフを実現できます。

今日からでもできることから始めてみましょう。

DeFiにおいては「防御は最大の攻撃」になるのです。

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